反射係数、VSWR、反射損失、リターン・ロスの換算
伝送線路 (transmission line) に線路の特性インピーダンスと異なる負荷を接続
すると、電磁波の反射を生じ、その結果として、
1) 伝送損失
2) 入出力インピーダンスや伝送特性の分散(周波数特性)
3) 入射波と反射波の干渉による「定在波」
を生じますが、この反射の大きさを評価するためのパラメータとしては、次のよう
なものが使われます。電圧反射係数以外は反射波の方向に関する情報を捨ててしま
いますので、情報量が少なくなることに注意してください。
電圧反射係数 (reflection coefficient)
- 進行波に対する反射波の割合で、その値は -1 から +1 の間になります。負
荷インピーダンスが 0 のとき -1 になって、進行波は完全に打ち消され
ます。これがショート状態です。負荷インピーダンスが無限大のとき + 1
になって、進行波は2倍の電圧になって戻ってゆきます。これが開放状態
です。インピーダンス・マッチングがとれた状態では 0 になった、すべ
ての電力が負荷に吸収されます。
電力反射係数 (reflection coefficient in power)
- 電圧反射係数の自乗です。反射電力の入射電力にたいする比になります。
電圧定在波比 (Voltage Standing Wave Ratio)
- 電圧定在波比は進行波と反射波の干渉から生まれる、伝送線路上の定在波の
最大電圧の絶対値を最小電圧の絶対値で割った値で、無反射だと 1 にな
ります。昔の「レッヘル線」を使った測定では、この値から他のパラメー
タを求めました。
反射損失 (reflection loss)
- 入射電力に対する反射電力の比を「dB」で表したものです。
リターン・ロス (return loss)
- 入射電力が反射するときどの程度の損失がでるかを考えたものです。反射波
の測定を目的としたひねくれた概念で、全反射して全ての電力が戻ってく
ると 0dB で無損失、電力のすべてが負荷に吸収されると、無限大の損失
になります。あまり良い概念とは思えませんが、古くから現場で使われて
きました。「ロスが大きいほど良い伝送系」になることに注意してくださ
い。
反射係数そのものは、線路に接続された負荷の「規格化インピーダンス」(normalized
impedance) から、次式のように決まります。
r = (Zn - 1)/(Zn + 1)
Zn = Z/Z0
ここに、r = 電圧反射係数
Zn = 規格化インピーダンス
Z0 = 伝送線路の特性インピーダンス (Ohm)
Z = 負荷インピーダンス (Ohm)
電圧反射係数と他のパラメータの間には、次のような関係があります。
電力反射係数 = r^2
VSWR = (1 + abs(r))/(1 - abs(r))
反射損失 = -10*log10(1 - r^2) [dB]
リーターン・ロス = 10*log10(r^2) [dB]
「abs(x)」は x の絶対値、「log10(x)」は x の常用対数(10 を底とした対数)です。
平林 浩一