簡単な電気特性の計算
構造
「coaxial」(同軸ケーブル)、「twisted-pair」(ツインリード)のいずれかを選択し てください。

(内部)導体径
同軸ケーブルの場合は内部導体の直径、ツインリードの場合は導体の直径を mm 単位 で入力してください。

外部導体径/導体間隔
同軸ケーブルの場合は外部導体の直径、ツインリードの場合は導体の中心間距離を mm 単位で入力してください。

誘電体
誘電体材料を、PE(ポリエチレン), CPE(発泡ポリエチレン), PTFE(4弗化エチレン), PVC(塩化ビニル), AIR(空気)から選択します。

(構造と誘電体材料を選択し、サイズを入力してから「compute」をクリックすると、 いくつかの電気特性を計算します。)


よく必要になるワイヤ・ケーブルの電気特性は、次のとおりです。導体抵抗、キャ パシタンス、インダクタンス、コンダクタンスは直流から低周波で必要になるもの で、1次定数と呼ばれ、特性インピーダンス、速度係数、減衰定数は高周波で必要 になるもので、2次定数と呼ばれます。

導体抵抗

導体抵抗は周波数によって大きく変化しますが、これは表皮効果や近接効果 といった渦電流が原因です。直流抵抗については、「ワイヤ・ゲージ」の 換算ページを使って計算してください。

キャパシタンス

キャパシタンスはワイヤ・ケーブルの幾何学的形状と導体の周囲にある誘電 体(絶縁体)の誘電率で決まります。誘電体の誘電率は周波数によって変 化するのが普通ですが、ポリエチチレンや4弗化エチレン等、高周波同軸 ケーブルに使われる誘電体の場合は、周波数依存性が極めて低く、低周波 で測定した値を高周波まで演繹することができます。オーディオ周波数帯 域以下で多用される PVC とか、難燃化されたポリエチレン等については、 誘電率の周波数依存性が高く、温度特性も大きく、しかもコンパウンドの 組成によって大きく変化しますから、注意が必要です。

インダクタンス

ケーブルのインダクタンスは、導体や絶縁体に磁性体が使われない限り、ケ ーブルの幾何学的形状だけで決まりますが、他の部品のインダクタンスに 比べて充分に小さいことが多く、計算が必要となるのは希です。

コンダクタンス

直流の場合は「絶縁抵抗」ですが、高周波になると、「誘電体損失」という まったく別の物理現象になりますので、注意が必要です。絶縁抵抗を必要 とする場合は、ポリエチレンのような、体積固有抵抗の大きな材料を使い ますが、それでも間に合わないときは、「ガード電極」等の回路上の工夫 で対処します。誘電体損失は、ω*C*tan(δ) で計算できますが、tan(δ) の値が周波数に依存することが多く、注意が必要です。ここで、C はキャ パシタンス、tan(δ) は誘電体損失です。

特性インピーダンス

ケーブルの特性インピーダンスは低周波では大きな周波数依存性を持ち、 高周波では、ほぼ √(L/C) になって、安定します。

速度係数

ケーブルを伝わる電磁波の速度は、低周波ではかなり周波数によって変化し ますが、高周波になると、ほぼ 1/√(ε) になって、安定します。ε は 誘電体材料の比誘電率です。

減衰率

ケーブルの減衰率は、導体抵抗と誘電体損失で決まり、比較的低い周波数で は前者が主役になって、周波数の平方根に比例し、高い周波数になると後 者が主役になって、周波数に比例するようになるのが普通です。
これらの電気特性は、同軸ケーブルとかツインリードを含む、ごく簡単な構造につ いてしか、解析的な計算はできません。複雑な形状については、数値計算に依存す ることになります。ここでは、ごく簡単な形状しか扱いませんが、多くの場合、こ のいずれかの形状に近似することで、設計や利用の目安を得ることができます。

平林 浩一